就活生注目!ブラック企業の見分け方

2012年12月28日  日経新聞

仕事がきつい、休めない、給料が払われない…      

仕事がきつい、休みがない、まともに給料が払われない。

3ナイ尽くしのブラック企業に入ってしまわないために、これだけは注意しよう

企業だけでなく職場単位のブラックやグレーも

 初任給19万8500円(残業代別途支給)のはずが、実は月80時間以上の残業が織り込み済みの数字だったとしたら。ボランティア研修という名のもとに、休日返上で働くのが当然の会社だったら─。残念ながらどちらも現実の話。100時間を超す残業が続き、過労死や過労自殺に至って、裁判で争われる過程で明らかになった実態だ。

 「このような長時間労働で仕事がきつい、休暇が取れない、賃金がまともに払われないなど、労働基準法不在のひどい働かせ方をしている会社を、端的に表す言葉として生まれたのが“ブラック企業”です」(関西大学教授の森岡孝二さん)。

 背景には、採用抑制が続いて正社員から非正規社員への置き換えが進んだことがある。少ない人数で、先輩社員も過重な仕事量を抱え指導や支援する余裕もない。新入社員も即戦力であることが求められる。仕事はきつくなり、すさんだ職場でいじめが生まれたり、上司から「派遣の方が働いている」「文句は仕事をやってから言え」などパワハラ同然の暴言を浴びたりすることが起こっている。

 苦労して入っても働き続けられないようなブラック企業では、就活の甲斐がない。「簡単に企業を色分けできるわけではない。ただ要注意な企業に多い特徴もある」(森岡さん)。見分ける指標として次ページの項目を参考にしてほしい。

 就活情報からもグレーな会社を読み取ることはできる。「本来初任給とは、基本給+一律支給の諸手当のこと。初任給を◯円~と幅を持たせて表記しているとしたら、何か理由があるはず」。前出のケースのようにあらかじめ残業代を含めていることもある。給与や労働時間などの基本情報が曖昧で、就活での質問がタブーになっているとしたら、要注意だ。

 また、劣悪な仕事環境や条件は、企業レベルだけでなく職場単位でも直面しうる。「入社してから気づくこともあるので、入ってからどうしたら自分を守れるのかも知っておいてほしい」(森岡さん)。

 一番大事なのは、知識は力ということ。例えば妊娠したら仕事を続けられない雰囲気を感じたとしても、働く権利のなかに、生み育てる権利も入っていること、産休育休は守られるべき労働条件であることを、知っているだけで心持ちは大きく違う。辞めざるを得なくなっても、退職勧奨を受けて辞めれば会社都合退職となり、すぐに雇用保険が出るが、知らずに自己都合で退職すれば受給制限で3カ月間でないのだ。

 労働者を保護するための労働法を知っていることが、働く上でいざという時に役に立つ。

企業からの情報を鵜呑みにするな!
「ブラック企業」かもしれない会社の見分け方 10のポイント

1. 残業時間が非常に長い

労働基準法無視のひどい働かせ方をしている

 残業100時間は過労死の労災認定の判断基準にもなる数字だが、これを上回る残業を労使協定に盛り込んでいる企業も少なくない。

2. 過去に過労死・過労自殺が起きている。
セクハラ、パワハラなどが続発している

 2011年の過労死や過労うつなどの労災補償の請求件数は2170件。顕在化しているのは氷山の一角だ。労働問題が頻発している企業は要注意。

3.離職率が高い(従業員の規模に比べて、採用人数が多い)

規模に対する求人数の割合や離職率が目立って高い企業

 経済環境など年度ごとの違いもあるが、大量に逃げ出すことも見越しての大量採用。辞めてもまた採ればいいという働かせ方をしている可能性大。

4.女性の勤続年数が極端に短い

 結婚・出産で続けにくいとすれば、性差別が根付いている、労働者の基本的な権利に対して意識が低いなどの企業体質があると思われる。

5.初任給がどのくらいになるかなどが曖昧
詳しく見ると、残業代が初任給などに組み込まれている

 初任給に一律支給ではない住宅手当や地域手当などの加算や、残業代や出来高払いの加算によって、見た目の給与を高く表示していることもある。

6.カリスマ経営者による急成長企業
やたらと従業員のやる気を鼓舞する企業

 急成長に労働環境の整備が追い付いていないのではないか、成長のためには従業員に無理をさせても当然になっていないか疑ってみることも必要。

7.募集条件実働が著しくずれている

就職情報サイトなどに出ている採用データと、入社後の労働条件が大きく異なる企業

 事前に口コミなどで実態を知ることが第一。入社後ズレに気付いたら関係機関に相談を。心身の健康を損なうくらいなら辞めるのもアリと思って。

8.夢や成功を誇大にかき立てる

「〇年後には独立可能」「入社即店長」「〇年後には年収〇百万円」などの「夢」をやたらと売り物にする企業

 夢を大げさに言って盛り上げ、さも自分の意思であるかのようにマインドコントロールし、過酷な労働条件への不満を黙らせていることもあり得る。

9.労働条件の劣悪さがネット上でよく話題になる

 過労死自殺や社内いじめなどの実態があれば、ネット上で噂になることも。匿名情報の無責任さもあると認識した上で、一考してみても。

10.短期間に急成長し、株価が異常に高い企業

 同業他社に比べて株価が異常に高いとしたら、高くなる理由があるはず。収益率アップのために人件費を不当に抑制していないかチェック。

入社前にこれだけは知っておくべき!
働くときに必要な法律の知識

第15条
労働条件の明示
特に重要な次の5項目は、口約束だけでなくきちんと書面を交付しなければならない。

1 契約はいつまでか※
2 どこでどんな仕事をするのか
3 仕事の時間や休みはどうなっているか
4 賃金はどのように支払われるか
5 辞めるときの決まり

※労働契約の期間は定める場合と定めない場合があり、通常、正社員は長期雇用を前提として特に期間の定めがない

労働基準法の第15条では、働き始める前の契約で、労働条件を書面にすることとしている。中でも上の5項目は絶対的明示事項だ。
第89条
就業規則の届出
必ず記載しなければいけない

1 始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制
2 賃金
3 退職

パートやアルバイトも含め10人以上の企業なら届出義務がある就業規則。少なくとも上の3項目は就職したらまず確認しておきたい。

『知って役立つ労働法』を読んでみよう
上記の2つの条文だけでなく、これから就職して働くときに知っておきたい労働法について、分かりやすくまとめられているのが『知って役立つ労働法』。厚生労働省のHPからもダウンロードできるのでぜひ参考に。

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