【ニュース『深・裏・斜』読み】ノロウイルスに感染したら…乳幼児・高齢者は病院へ

2012.12.30  夕刊フジ

 全国的に感染が広がるノロウイルス。年末年始は、忘年会や帰省での移動、初詣などで大勢が集まる機会が多いだけに感染リスクは高まる。ただ、症状が出ても特効薬がなく他人にうつしてしまう恐れもあることから、「病院には行かない方がよい」との指摘もある。実際に感染してしまったらどう対処すればよいのか。(道丸摩耶)

 ●「家で休む」

 ノロウイルスは例年、11~2月ごろが感染のピーク。嘔吐や下痢、腹痛などが主な症状で、生ガキなどの貝類のほか、感染者の吐いた物や便からも感染する。だが、ワクチンがないため、予防が難しいうえ、感染しても特効薬はない。

 治療は対症療法で、病院でできることは脱水を防ぐ点滴などに限られる。大勢の人が出入りする病院で感染拡大につながる恐れもあり、感染症に詳しい自治医科大学付属病院の森沢雄司感染制御部長は「病院に行くより、家で休んだ方がよい」とアドバイスする。

 ノロウイルスは世界的にも感染が広がっているが、「イギリスでは医療従事者の過剰負担を避ける意味合いもあり、『受診しても意味がない』とされている」(森沢部長)という。日本でも、インフルエンザの流行期と重なれば、医療スタッフは業務が過剰になり、患者は診察まで長い待ち時間を余儀なくされ、病院が混乱する恐れがある。

 「吐いた物を詰まらせて亡くなる例は多いが、ノロウイルスそのもので亡くなるケースは少ない」と森沢部長。体力がない乳幼児や飲食が難しい高齢者らは病院に行った方がよいが、そうでなければ、スポーツ飲料など水分を取りながら休むことが重要だという。

 ●長くて2日

 だが、厚生労働省結核感染症課の担当者は「下痢と嘔吐の症状のみで、ノロウイルスかどうかを患者自身が診断できるわけではないのに、病院に行かない方がよいというのはいかがなものか」と疑問を呈する。吐き気や下痢の原因がノロウイルスかどうかを特定するには時間がかかり、体力のある人であれば、原因が判明する前に治ってしまう。

 それでも病院に行く必要性を訴えるのは、自身もノロウイルスに感染したことがある浜松医科大の大磯義一郎教授(消化器内科)だ。「下痢や嘔吐を引き起こす疾患は感染症以外にもあり、ノロウイルスによる感染性胃腸炎かどうかの診断は必要。治療薬のある感染症もあることや、小児や高齢者などは激しい下痢・嘔吐で重症化することがあるので、適切な対症療法を受けるためにも、医療機関にかかった方がよい」

 国立感染症研究所(感染研)によると、ノロウイルスの特徴は「症状が続くのが数時間から平均して1、2日までと比較的短い」ことだという。耐えられないほどの強い症状や高熱、何日間も症状が変わらないなどの場合は他の疾患も疑われ、迷わず病院に行った方がよいという。

 ●食中毒注意

 不特定多数が集まる機会が多い年末年始だが、厚労省によると、ノロウイルスは感染者への接触やくしゃみなどによる飛沫感染だけでなく、汚染された貝などを十分に加熱調理せずに食べたり、感染した調理人による料理を食べたりする「経口感染」でも広がる。

 食中毒は一般的には食品が傷みやすい夏に多いが、ノロウイルスは寒い時期に流行し、冬の食中毒の原因となる。このため、忘年会での食事や弁当などで集団食中毒を起こすケースも少なくない。感染研は「調理だけでなく、配膳する人も手洗いをしっかりしてほしい」と注意を呼びかける。

 ■潜伏期に感染拡大の恐れ

 感染研によると、今年のノロウイルスなどによるむ感染性胃腸炎は12月中旬に少し減少したが、例年と比べると依然高く、今後も感染拡大に注意が必要だ。

 「ひどい場合は1日10回以上も嘔吐や下痢を繰り返すことがある」(感染研)という激しい症状が知られるノロウイルスだが、人によっては症状が出なかったり、軽症で終わったりすることも。また、ノロウイルスの潜伏期間はおよそ24~48時間で、この間は症状がないため、知らずにウイルスを排出し続けてしまう。

 こうしたことから、「施設や家庭へのノロウイルスの侵入を防ぐのは不可能」と感染研。結局は、「こまめに丁寧に手を洗う」などの自衛策がもっとも有効といえる。身近に嘔吐や下痢の症状がある人がいた場合は、タオルなどは共有せず、ドアノブやトイレの便器を消毒することなども必要だ。