2014年4月21日 日経新聞

 経営再建中のシャープ。かつては就職先の人気ランキングで上位の常連だったが、電機各社で人材の獲得競争は激しく、ほしい人材の確保は難しい。それでも2015年春には今春の3倍にあたる300人を採用する計画だ。どんな学生を求め、若い世代に何を期待するのか。コーポレート統括本部の深堀昭吾執行役員に聞いた。

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 15年春入社の大卒の採用計画は技術系130人、ビジネス系70人と大幅に増やし、高卒の採用を再開します。シャープのDNAを受け継ぎ、経営に携わるコアの人材を安定して採用して育てていきたいとの強い思いがあります。

 5月に生活環境研究所が立ち上がります。空気をきれいにする効果のあるプラズマクラスターなどの技術を生かし、新分野を開拓します。採用を増やして医療や介護などの分野で活躍してもらいます。

 シャープが求める学生は約束を守る「誠実さ」、諦めずに取り組む「粘り強さ」。そしてシャープを理解する「ファン」であることです。太陽電池や白物家電など事業領域が多岐にわたっています。事業を理解した上で何がしたいのか、自分で考える学生が欲しいですね。英語能力テスト「TOEIC」の点数や資格のような定量的な物差しでは学生を判断しません。

 集団面接を実施する会社もありますが、シャープは1人ずつが基本です。集団だとどうしても話しづらくなる学生がいますし、シャープファンの取りこぼしをしたくないのです。面接時間は1人に35~40分を想定しており、14年春の採用から従来より1.5倍の時間をかけています。時間をかければ、どんな人物かわかりますし、会社のことを知らないとボロが出てきます。

 学生が働いた時のイメージをしやすいよう、面接に学生が志望する営業や技術系の職種の社員を同席させます。入社を希望する学生は面接を通じて成長します。シャープのことをよくわかってくるので、役員クラスが面接に応じても、どこか共通する土台の上で会話をできるようになっていきます。

 再建中で、5年前より応募者が半分以下に減りました。一方で、1人の採用にかける時間を増やせるし、学生もシャープの看板を意識せずやりたいことを言ってきます。一緒に仕事をしたいと思える学生を採用したいですね。

 「経営危機に陥ったからこそ気付いたことがある」と深堀氏。営業最高益だった2007年3月期当時は学生が殺到した。一方、当時採用した人たちの離職率は他の世代より高い。「組織の風通しも悪く、会社が厳しい環境にあることをきちんと伝えられていなかった」(深堀氏)
 高橋興三社長の号令の下、構造改革を進める。14年3月期の最終損益は50億円の黒字を見込むが、改革は道半ば。今春の新入社員は経営危機を知った上で、入社の覚悟を決めた若者たちだ。学生が納得する将来ビジョンを示すことができれば人材は集まってくる。
(企業報道部 大西綾)

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