若いころに安月給で働き、中年を過ぎたら左ウチワで高給取り――。こんな「年功序列」の「終身雇用」に決定的なほころびが出ている。右肩あがりの経済成長が終わり、そのような「ムラ社会のルール」は通用しなくなってしまった。

そのあおりを受けているのが、現在40~50代の「バブル世代」だ。団塊の世代は「65歳以上再雇用義務化」のイスを勝ち取り安泰だ。就職氷河期を経験した30代の精鋭たちは粒ぞろいで、高い能力でどんどん突き上げてくる。その間に挟み撃ちとなって、いま生存戦略が問われている。

 会社や景気のおかげなのに「気位が高く、身の程知らず」

あるヘッドハンターは、バブル世代の厄介さについてこう話す。

「あの世代の転職者は、勤務地は丸の内じゃないとイヤとか、経費はいくら使えるのかとか、とにかく『こだわり』が強い人が多いんです。要するに気位が高く、身の程知らず。会社や景気の力を、自分の実力と混同してしまっているんですよね」

80年代後半からバブル崩壊まで、新卒の就職活動は「楽勝」だった。そうした時期に入社した彼らは大量採用で人数が多く、苦労しらずのまま出世ピラミッドの中間に居残っている。

30代の後輩からすれば、彼らは気楽に話せるところもあるが、緊張感に乏しく「ものごとに楽観的で、あまり仕事をしない」「浪費癖があって、すぐに『キャバクラ行こう』と誘ってくる」などといった不評も耳に入ってくる。

確かにバブル期は、交際費も豊富だった。出張の飛行機でファーストクラスを使った人もいる。会社のカネで銀座のクラブに通いつめたり、海外駐在では行く先々に彼女がいたりと、まさに「好き放題」という人もいたという。

バブル期をアメリカで過ごした48歳の会社員は、当時をこう振り返る。

「かつては海外駐在手当が莫大だった。ジョン・F・ケネディ空港からニューヨークまでヘリコプターを飛ばしたり、札束を振ってタクシーを止めたり。とにかくそういう豪快な時代でした」

  「40歳までに自らキャリア設計」を怠ったツケ

そんな彼らも、会社の業績が冷え込む中で、経費を使って遊ぶこともできず、思っていたほどの高給を維持することもできなくなって久しい。それどころか会社からは、幹部以外は世代交代のターゲットにされている。

人事コンサルタントの城繁幸氏は「追い出し部屋は永遠に不滅です」というブログ記事で、こう指摘している。

「『今の60歳をもう5年雇えと言われても誤差ですむが、バブル入社組を65歳まで雇うのはシャレにならない』と言っている人事は少なくない」

「企業がコスト的に割高だと見なし始める40歳までの間に、自らのキャリア設計を行うべきだろう」

年を取れば、多くの労働者の生産性が下がる。年功序列以前から、企業において40歳以上が「コスト的に割高」になるのは当然のことなのだ。

そこで「お払い箱」を避けるために開発されたのが、丸抱えで助け合いの「年功序列」というシステム。もともとムリがあるしくみだが、これまでは「若いころに安月給で働いたんだから」という言い訳が通用していた。

しかし「バブル世代」は若いころから恵まれた金銭環境にあったため、そのような同情を買うことなく捨て去られようとしている。これも日本型雇用崩壊の過渡期の現象である。

とはいえ「年功序列」なき世の中は、バブル世代より下の20~30代にも当てはまることであり、いまから油断はできないだろう。

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