よく世間では「女が男を欺す」と云います。しかし私の経験
によると、これは決して最初から「欺す」のではありません。
最初は男が自ら進んで「欺される」のを喜ぶのです、惚れた
女が出来て見ると、彼女の云うことが嘘であろうと真実であ
ろうと、男の耳には総べて可愛い。たまたま彼女が空涙を流
しながら靠れかかって来たりすると、
「ははあ、此奴、この手で己を欺そうとしているな。でもお
前は可笑しな奴だ、可愛い奴だ、己にはちゃんとお前の腹は
分かってるんだが、折角だから欺されてやるよ。まあまあた
んと己をお欺し・・・・・・・・・」
と、そんな風に男は大腹中に構えて、云わば子供を嬉しがら
せるような気持で、わざとその手に乗ってやります。


ベルーナ新作トレンド速報特集
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック