人間にとっては、「生きること」と「考えること」を離すことは事実上できません。つまり、「よく生きる」ということは「よく考えること」、「よく考えること」は「よく生きること」で、この二つは離すことができない。私はそう思うのです。

・・・ことばというものが考えることと生きることとを結びつけることをやめて、すなわち正しい表現能力を失って、もう何かを表現するのは問題ではなく、ことば自体が一つの糸のきれたたこ(凧)のようになり、一人歩きを始めて、そのことばのやりとりだけでもってすべての人が問題をすませてしまう。つまり、ほんとうの現実とことばとが、かみあっていない。生きていない、考えていない。それでいてしかも、生きているかのような、考えているかのような状態が出てくる。この状態は、おそらく日本だけの問題ではないでしょうが、いまいちばん大きな日本の欠陥ではないかと思います。・・・

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