ベッドの上の枕のように
  はちきれた土手が盛り上がって
  スミレの頭を休ませてるところに
  僕らは愛し合いながら横たわっていた

  つなぎあった僕らの手は
  にじみ出る汗の香油で固く結ばれ
  二つの目から飛び出る視線は
  僕らの目を二重の糸でつなぎ合わせる

  今は手をつなぎあうことが
  ひとつに結ばれるための手段
  そして互いの姿を見つめあうことで
  思いを交し合おうとする

  勝利の女神が二つの陣営の間で
  どちらを贔屓にするか迷っているように
  僕らの魂も体から出てきたまま
  二人の間で逡巡している

  僕らの魂がぐずついている間
  僕らの体は墓標のように横たわる
  そして一日中同じ姿勢のまま
  一言もいわないでじっとしているのだ

  もしも誰か 愛によって清められ
  魂の言葉をわかることができ
  心から素敵な愛に育まれたものが
  僕らの近くに来たとしたら

  その人は 溶け合った魂のどちらが
  話をしているのか区別できないにしても
  その話から新たな精気を受け取り
  来た時よりも一層清められるだろう

  この恍惚が迷わすことなく
  僕らに愛を教えてくれる
  それはセックスなどではなく
  心の中での動きなのだ

  でもどんな魂も
  未知のものからできている
  愛はこれらの魂を混ぜ合わせ
  ひとつのものに結び合わせるのだ

  一輪のスミレを植え替えると
  それまでは弱々しかったものも
  力や色や大きさが
  見違えるように増す

  愛も二つの魂を結び合わせ
  互いの力を増させるから
  そこから力強い魂がほとばしり
  もはや孤独に悩むこともない

  新しくひとつの魂になった僕らは
  自分たちが何でできているかを知っている
  僕らを作り出した原子は
  決して変わることのない魂なのだ

  ああなのに! こんなにも長く
  なぜ肉体をまとわねばならないのだろう
  肉体は僕らではなく 僕らのもの
  僕らは精魂 肉体は天球

  僕らは肉体には感謝する
  僕らを最初に結びつけてくれたし
  感覚の力を与えてくれた
  決して無価値なものなんかじゃない

  天の精気が人間に働きかけるのは
  まず空気を伝わってきたあと
  魂もまず肉体に宿った後
  ほかの魂に向かって流れる

  僕らの血はやっきになって
  魂に似た霊気を作ろうとする
  そのような指が人間を生み出すには
  かすかな結び目を必要とする

  それゆえ純粋な恋人の魂もまず
  感覚でとらえることのできる
  情念と肉体に降りなければならない
  でなければ王侯もとらわれの身だ

  それゆえ肉体に戻ろう
  弱い者でも愛の表れをわかるように
  愛の神秘は魂の中で育つが
  肉体はその教本なのだ

  もしも僕らに似た恋人が
  ひとつになった僕らの対話を聞いたとしたら
  その人はきっと見えるに違いない
  肉体に戻っても変わらないぼくらの姿が

 

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