2014年12月17日 日経新聞

 新築住宅は、主要構造部に問題があったり、雨漏りがしたりした場合など、建物に万一のことがあっても10年間は保険金が出る。2004年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」によって、新築住宅の売り主による10年間の瑕疵(かし)保証が義務付けられた。その範囲は基礎や柱、梁(はり)など「構造耐力上主要な部分」と屋根や外壁など「雨水の浸入を防止する部分」だ。

■売り主が倒産しても大丈夫

 万が一、売り主が倒産した場合の措置も設けられている。「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)」では新築の売り主に対して保険に加入したり、保証金を供託したりして保証金の支払いを担保するよう義務付けているからだ。これとは別に、さらに長い保証をしたり、ほかの部位について独自の保証を付加したりする会社もあるが、こうしたものは同法の対象外だ。

 中古住宅でも保険をかけることは可能だ。保証内容は保険商品により異なるが、主に雨漏り・水漏れ・給排水管の故障・シロアリを防止する部分について1~5年間は保険金がおりるといったもの。売り主業者や仲介会社が独自の「保証」をしているケースもあれば、個人間売買において、検査会社による所定の現場検査に適合することを条件に、買い主が加入できる保険もある。加入する前に保険のカバーしている範囲や条件、期間などをきちんと把握したい。

■保険期間中の瑕疵のみ判断

 気をつけたいのは保険や保証がついているからといって、家が長持ちするわけではないということだ。それはなぜか。

 瑕疵保険の適用を判断するための現場検査は「保険期間中に瑕疵が発生しないか」といった観点で検査が行われる。つまり、1年や5年を経過した後に瑕疵が発見される可能性は考慮しないわけだ。

 実際には、3年後、6年後などに瑕疵が発見される可能性があっても、とりあえず保険は適用になってしまうわけだ。こうした事情・可能性を説明し、買い主に入居後の建物ケアを促すなら話は別だが、販売の現場においては、そんなケースはごくまれだろう。

■住宅はパソコンや自動車ではない

 例えば築古の中古マンション。今は上下水道の配管が利用できても、10年以内にはメンテナンスや交換が必要だと想定できるケースがある。こういう案件について「保険がついているから大丈夫ですよ」といったセールストークを使ってしまったら、どういうことになるだろうか。

 これまで、新築住宅は、あたかもパソコンや自動車などの工業製品を売るかのような売り方をされてきた。その結果、点検やメンテナンスを行わず、建物の寿命を縮める結果となっている。実際には、建物は手作りの部分も多いし、時間の経過とともに劣化するが、手間暇をかけて点検とメンテナンスを行う必要性については説明不足だった。

 保険は文字通り「保険」であり、あくまで「万が一」のための備えにすぎない。契約前にしっかりと建物を見極めるはもちろん、入居後の点検・メンテナンスを怠らないなどの工夫と併せて、初めて建物は長持ちすることを理解しておきたい。

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