2014年12月20日 日経新聞

 今年も残りわずか。年が明けると大学の受験シーズンは本番を迎える。受験勉強や健康管理と並んで念入りに準備しておきたいのが合格後の学費や生活費。自己負担で賄いきれないときは奨学金など支援制度や教育ローンが選択肢になる。最近の傾向と使い方のポイントをまとめた。

 「卒業後の返済を考えると気が重い」。都内の私立大学に通う男子学生(23)はこぼす。普段から節約やアルバイトに励み「欲しい物も極力我慢している」。だが学費のほかサークル活動などもあり、奨学金がなければ学生生活は成り立たないという。

 奨学金を利用する学生は増えている。日本学生支援機構が全国の国公私立大生を対象に実施した調査(有効回答約4万人)によると、奨学金を受給している大学生(昼間部)の割合は2012年度で52.5%と10年前に比べ21.3ポイント上昇した。その間に学生の収入は1割減り、収入に占める奨学金の割合も10.1%から20.5%に高まった。学費が高止まりする一方、親の収入は伸び悩んでいるためだ。


画像の拡大


画像の拡大


■都内私大で充実


 では奨学金が必要な場合、どう選べばいいのだろうか。まず返済する必要がない給付型で、受給金額が多いタイプを探そう。リクルート進学総研の小林浩所長は「大学が独自に用意する奨学金制度はこの数年で充実してきた」と指摘する。

 特に目立つのが都内の私大による地方出身者を対象にした給付型の奨学金だ。早稲田大学や慶応義塾大学などが先行し、15年度からは法政大学、明治学院大学などが導入する。青山学院大学は入学者の約1割にあたる約350人を対象に始める。金額は年数十万円が多い。入学試験の前に申し込んで審査を受けるため、早い段階で自分が該当するか分かるのも特徴だ。

 ただ給付型は募集人数に限りがあり、受給条件などのハードルが比較的高い。実際の利用が多いのは卒業後に返済する貸与型の奨学金だ。貸与型は日本学生支援機構の奨学金がよく知られているが、大学や自治体も独自に用意している。できれば無利子型、難しければ有利子型を使う。

 学生支援機構の奨学金は14年度予算ベースで有利子型で約96万人、無利子型で約45万人が対象となった。有利子型が主流だが、無利子型は前年度から約2万人増えた。いずれも収入や成績などの条件があり、選考を経て対象を決める。無利子型は有利子型に比べ競争率が高い。
 貸与型の奨学金は返済を意識して計画的に借りよう。利子の負担を少なく、貸与額を抑えることで返済の負担は大きく変わる。

 例えば学生支援機構の無利子型で月5万1000円を4年間借りると、月1万3600円ずつ15年払えば完済する。一方、有利子で月5万円を借りた場合、金利1%なら月々の返済は約1万4400円。15年で約20万円を利子として払う計算になる。金利が上限の3%なら利息分は総額60万円に達する。

 ファイナンシャルプランナーの豊田真弓氏は親子で大学4年間の資金計画を立て、奨学金の額を決めることを勧める。進学にかかる金額や奨学金の負担を共有し「借りすぎを防ぐ」(豊田氏)ためだ。

 計画の作成ではまず、学年ごとに学費と生活費を合わせた必要額を計算する。文部科学省などの調査を参考に、国公立か私立か、自宅通学か下宿かといった条件を反映するとより正確になる。

 必要額から親の貯蓄や毎年の収入で賄える額を引いた残りが子どもが負担する分。奨学金やアルバイトなどでカバーする。奨学金を借りるなら、卒業後の返済額や返済期間も試算し、無理がないようにプランを練ろう。


■短期ならローンも


 もちろん、実際は計画通りに行かないことも多い。大切なのは計画を修正すること。実家に余裕ができていれば、仕送りを多くして奨学金を抑えてもいいし、思うようにアルバイトができなければ奨学金を増額することを考える。

 奨学金に限らず、使える制度は有効に使いたい。特に受験から入学直後にかけては受験料や交通費、入学金などまとまったお金が必要になる。短期的な負担をしのぐなら教育ローンを使い、子どもに借金をさせない考え方もあるだろう。「国の教育ローン」は今年度から借入額の上限を350万円に引き上げた。

 大学入学前は都道府県など自治体が高校生向けに用意する公的な支援制度も選択肢になる。例えば東京都には受験料や塾代を貸与する制度がある。金額や対象者は限られるが、入学すれば返済する必要がない。


画像の拡大

 子どもの大学進学を想定するなら、計画的に資金をためておきたい。進学先にもよるが「受験時に200万~300万円あれば家計の資金繰りの心配は小さくなる」(豊田氏)。児童手当は通常、15年間積み立てれば約200万円。早くから備えれば無理な金額ではない。(長岡良幸)


■返済怠ると延滞金 猶予手続きは早めに
 貸与型の奨学金は卒業後に返済する必要がある。しかし収入が少ないなど返済が難しいケースでは、返済を猶予する仕組みもある。日本学生支援機構では一定の条件を満たせば最長10年間、返済を先延ばしできる。親などの収入が少なく、無利子の奨学金を利用した人は年収が300万円に満たない場合、無期限に返済を猶予できる。
 ただし手続きをせずに返済を怠ると返済額に対して一定の延滞金がかかる。3カ月以上延滞すると信用情報機関に情報が伝わり、将来、ローンを組んだりクレジットカードを作ったりする場合に審査が不利になる可能性がある。返済が困難になりそうなら早めに手を打とう。



このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック