2015年1月20日 日経新聞

 シャープは2015年3月期の連結最終損益が赤字となる見通しになり、新たな経費削減策を実施する方針を固めた。時間外労働(残業)カットなどで合計45億円程度の固定費節減を見込む。労働組合は今春の労使交渉で電機連合の「統一闘争」から3年連続で離脱し、ベースアップ(ベア)を要求しない方針。労使一体で緊急対応を急ぐ。テレビなどの不振に加え、頼みの液晶事業でカバーできないのは誤算だ。再建は再び正念場を迎える。

■労組はベア断念へ


再び正念場を迎えたシャープ(大阪市の本社)
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再び正念場を迎えたシャープ(大阪市の本社)

 シャープは19日、15年3月期の連結業績について「昨年10月31日に発表した予想(最終損益で300億円の黒字)を下回る見通し」と発表した。最終赤字は数百億円になる可能性がある。

 緊急の経費削減策だけでは赤字を補えないが、まずは業績改善に向けた取り組みを明確に示す。主力取引銀行からの支援を確保し続けるため、今春までに抜本的な再建策をまとめる。

 経費削減はまず、労組との交渉の必要がない時間外労働の削減を実施する方針だ。残業の徹底した抑制で年間20億円ほどの圧縮効果を見込む。

 通勤手当や食事の補助、出張の宿泊料・日当など従業員の収入に関わる経費については労組と合意のうえで、15年4月から順次実施する方向で調整している。嘱託社員の再雇用制度の中止、在宅勤務制度の導入なども検討している。


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 シャープ労組は直近2年の春季交渉で、業績悪化を理由に電機連合の「統一闘争」から離脱してきた。赤字転落となることで、今春もベアを要求しない見通し。正式には2月上旬に決めるが、労働条件の維持に向けて独自に経営陣と様々な交渉を進めていく。

 シャープの連結業績は、リストラ関連の巨額損失計上などで13年3月期まで2期連続で最終赤字となり、14年3月期に115億円強と3期ぶりの黒字に浮上していた。15年3月期の売上高は従来予想の2兆9千億円を下回るもようだ。

 14年4~9月期決算を発表した昨年10月31日、シャープは通期の最終黒字300億円の予想を変えなかった。電子部品など不振もあったが、事業は全体的に堅調。だが、その日が節目となった。日銀が追加金融緩和を決定、円安の流れが顕著になったからだ。

 高橋興三社長は当初「ある程度の円安なら業績はバランスする」とみていた。ただ、為替下落は止まらない。これまで底堅い事業だった白物家電は海外生産比率が高いため採算が悪化。輸入部品の多い太陽電池でも追加コストが膨らんだ。

 希望はまだあった。国内で生産するスマートフォン(スマホ)向けなどの中小型液晶パネルは円安が追い風となるためだ。ただ、年末にかけて中国でパネル価格競争が激化。主要顧客の生産調整もあり、550億円という同事業の営業利益目標達成も難しくなった。

■稼ぐ力に寒風

 シャープ全体での営業利益は500億円前後と14年3月期から半減する見通し。欧州家電事業からの実質撤退やパイオニア株の売却など「拡大路線」からの修正は進んでも足元、本業での稼ぐ力には寒風が吹きつける。

 16年3月期に純利益800億円の確保をめざしていた中期経営計画は撤回、新たに18年3月期を最終年度とする3カ年計画を策定する。みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行の主力2行の支援継続を得ることが生き残りの条件。「リストラ後の柱」としてきた中小型液晶パネルが苦境に立つ現状で、どのような再建策を描くのか。身の丈経営への回帰というポイントがはっきりしていた過去のリストラ時より、難しい局面ともいえそうだ。

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