ガーデニングが世の中に浸透し、それぞれの皆様が住環境の中で庭を造りガーデンライフを楽しまれる方が増えているのは非常に喜ばしいものです。日本に古来から受け継がれている庭文化に多種多様な要素が加わり現代の庭に姿を変えて来てはいますが、庭の位置づけが大きくまた重要なものになってきているのも現実です。

 庭の需要が増える中でガーデンスタイルも多種多様になり雑誌等のメディアで私たちの目を楽しませてくれていますし、庭造りをはじめられる方にとりましてはどのような庭にしようか考え心躍るのもまた楽しみの一つでありますが、一番大切な事はどんなに素敵な庭も決して真似する事の出来ないたったひとつの庭であると言う事です。それぞれの庭にはそこに存在する意味があり、場所や風土またその庭を使うご家族などそれぞれに最も適した庭であり表面的には真似する事は出来ますが、本来庭の持つ大切な部分は決して真似できるものではありません。

 最近ではガーデンデザイナー志望の方々も多くまた庭造りを仕事にされていらっしゃる方も増えてきましたが、傾向的にはどうもビジュアルな世界だけが重要視され目には見えない大切な部分をないがしろにしているケースも多々見受けられます。そのような重要な核のない庭は最初はそれで満足も出来ますが最終的には違和感を覚える庭になる事は間違いありません。庭が形や決まりのない自由な発想で造る事の出来る時代になってきた事によって、またある意味誰でもデザイナーになれる事の弊害がせっかく発展してきているガーデニング文化の大きな妨げになっている事も理解する必要があります。

 私が常々申している事ですが庭の持つ本来の意味として、そこに暮らす家族が健康で幸せになる事が最も重要な要素である事を前提に考えれば、そのお客様に最も適した庭があるはずですし、外見的には他の庭を参考にする事が出来ても本来の意味では決して真似する事の出来ないたったひとつの庭にならなければそれはもはや庭ではないと言っても過言ではありません。

 逆に言えばガーデンデザイナーがデザインした庭に限らずご自分で造られた庭も、また極端に言えば小さな花壇ひとつでもオンリーワンであるたったひとつの庭である訳です。決して人から褒められなくてもまた決してビジュアル的にたけていなくても、なにものも入り込む隙のないそこに暮らす人と生活に適している庭が素晴らしいと言える庭であります。また庭は永遠に生き続けるものでありますので共に暮らしていく事が出来なければなりませんし、そうあるが故に他に同じもののあるはずの無いたったひとつの庭になる訳です。
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