英語の教員をしてきた経験からいうと、教科書や問題集の解説や解答の中には首をひねりたくなるものが結構ある。一例を挙げると、ある出版社から出ている英文解釈の問題集に、"Man is a curious animal."という一文があって、解答ではこれが「人間は好奇心の強い動物である」となっていた。しかし、curiousには「奇妙な=strange」の意味もあって、文章の頭に来るとどちらかは後を読まないと分からない。そのこと自体を述べた文章なのだから、ここでは訳さないのが正解である。この問題集にはこのような間違いが山ほどあって、授業では意味が通らない所を指摘させ、ことごとく直していった。また別の問題集では only cildren という表現が使われていて、an only child(一人っ子)の複数形であるにもかかわらず、「ほんの子供でも」と解答集には書かれていた。文脈からしても明らかなことなのに・・・・・・。(onlyとmereの違いが分かっていないのかも)
 さて、表題に挙げた2例だが、"The Sun Also Rises"は言わずと知れたヘミングウェイの小説で、翻訳のタイトルはことごとく、『日はまた昇る』となっている。しかし、誰も不思議に思わないのだろうか――「日はまた昇る」を英訳したら"The Sun Rises Again"となることを。それを考えるとこの邦訳は「日また昇る」でなければおかしいはずである。
 もう一つの例、"Tomorrow is another day"は教科書に載っていた『風とともに去りぬ』(Gone With the Wind")の中に出てくるのだが、教師用マニュアルではこれが、「明日は明日の風が吹く」となっていた。これも、もしその意味なら、"Tomorrow will take care of itself"あたりになるのではないか。"Tomorrow is another day”
は坂本九も歌っていた「明日があるさ」としなければおかしい。
 以上をもってして言えることは、解答やマニュアルを鵜呑みにしてはいけない、ということである。自分の頭で考えることが教養ある大人への第一歩なのだ。
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