2015年6月29日 日経新聞

 夏本番まで待ったなし。いつの間にか、すっかりせり出てきたお腹を気にしつつ、「明日から頑張ろう」「週末にまとめてやろう」と悠長なことを言っていると、すぐに梅雨が明けて夏を迎えることに。メタボ腹をへこませるためには、「食事」「運動」「生活習慣」からのアプローチが欠かせない。まずは食事が肝心。ちょっとしたルールを踏まえておくだけで、日々の努力が「最短」かつ「最大」にできる方法をご紹介する。この夏、ラクに痩せる新ルールで、引き締まった体で周囲を驚かせてみよう!

■夕食がいつも20時を過ぎる人は夕方の空腹感を抑える

 食事でダイエットをするといえば、真っ先に「食事を減らす」と考える人は多いだろう。単純に摂取カロリーを減らせば痩せられるとの考え方は、一面では正しい。だが、日中はハードに働くビジネスパーソンにとっては、ストイックな食事制限は現実的ではないし、むしろ向かない。

忙しい現代人の食生活は、「炭水化物の過多」「昼食後、夕食までの長時間化による空腹感の増加」、そして「朝食<昼食<夕食」といった夕食量の偏りにあることも、メタボを進める原因とされている。食事で無理なくダイエットをするためには、「間食」を上手く活用するといい。(c)subbotina-123rf
忙しい現代人の食生活は、「炭水化物の過多」「昼食後、夕食までの長時間化による空腹感の増加」、そして「朝食<昼食<夕食」といった夕食量の偏りにあることも、メタボを進める原因とされている。食事で無理なくダイエットをするためには、「間食」を上手く活用するといい。(c)subbotina-123rf

 では、どんな方法が向くのだろう?

 ダイエット指導に実績のある渋谷DSクリニックにおいて、食事・栄養指導を行っている管理栄養士の榎田彩加さんによれば、ズバリ「間食をとること」がお薦めだという。言葉にすると拍子抜けするかもしれないが、16時~18時の小腹が空いてきた頃に合わせて、おにぎりやサンドイッチといった炭水化物の「間食」をとる。毎晩の夕食が21時を過ぎるようなビジネスパーソンは、それまでに空腹感を強めておかないことがポイントだ。

■1日の食事量は同じでも、夜が多いほど「太る」

 ダイエットをするために「間食」をとるという、まさに痩せるための対極にあるかのような提案。だが実際、こうした食事法はクリニックでも「分食」との目的で取り入れられており、ダイエット成功の実績を上げている。

 「肥満気味の40~50代男性に共通しているのが、『夕食のドカ食い』です。昼食から夕食までの時間が空きすぎるために、空腹が強まり、やっと食べられると思ってお腹いっぱいにしてしまう。また、そうした状況になるほど、そしゃくが減って早食いになる。これらの要因が食べ過ぎを習慣化してしまうのです」(榎田さん)

 この話に、「そうそう」とうなずいた読者は要注意。この「夕食ドカ食い」パターンを避けなければ、メタボ腹はいつまでも解消しない。

 「成人男性の基礎代謝(寝ているだけでも消費するエネルギー量)は、平均すると1日1500kcal。単純に24時間で割ると、1時間当たりに消費されるのは63kcal。毎晩6時間の睡眠をとる人であれば、就寝中に消費するエネルギーは378kcalです。もしも夕食に1000kcalを超すような食事をして、その後、1時間前後で寝てしまうような生活スタイルであれば、就寝中に消費できるカロリーを大幅に上回る。特に22時から深夜2時にかけては、『BMAL1(ビーマルワン)』というタンパク質の作用によって、脂肪を体にため込みやすいとされています」(榎田さん)

 夕食のドカ食いによって太る仕組みは先の通り。さらに昨今、注目を集めている「時間栄養学」という分野では、マウスを使った実験で「朝食と夕食の比率」を変えて比較した結果、食事量は同じでも夕食の量が増えるほど肥満になりやすいことが分かっている(下グラフ)。

マウスを使い「食事摂取の比率」と「体重の変化」の関係について、8週間比較した実験。1日の食事量は同じとし、「朝食」と「夕食」で比率を変えた5群で比較した。そのうちの1群は「自由に食べられる」ようにした。結果、「朝食3:夕食1」の朝食多めの食事方法が、最も体重が増えなかった。(J. Lipid Nutr.;Vol.24, No.1.2015)
マウスを使い「食事摂取の比率」と「体重の変化」の関係について、8週間比較した実験。1日の食事量は同じとし、「朝食」と「夕食」で比率を変えた5群で比較した。そのうちの1群は「自由に食べられる」ようにした。結果、「朝食3:夕食1」の朝食多めの食事方法が、最も体重が増えなかった。(J. Lipid Nutr.;Vol.24, No.1.2015)

■高カロリーなご飯類は夕方に食べておくのが理想

 では実際、「間食」にはどんなものが向くのか。

 「空腹が長くなると、すぐに体のエネルギーにできる炭水化物などの『糖質』をたっぷり食べたくなるとされています。これが高カロリーになる要因。そこで、夕食で取る炭水化物を先取りして、『おにぎり』を選んでみてください。例えば、おにぎりはのりが付いたもので、具材は、昆布、梅、サケなどがいいでしょう。ミネラルやビタミン、たんぱく質も補えます」(榎田さん)

 さすがに仕事が佳境を迎える夕方に、“おにぎりパクパク”というのは周りに対しても気が引けるというならば、「おやつ」で上手に空腹をしのぐ方法を活用しよう。

「空腹のあまり、やっと食べられる夕食で腹一杯になるまで……」。この繰り返しが、カロリー過多の原因になる。小腹が空いてきた夕方に、間食を取り入れることで、上手に空腹がコントロールできる。
「空腹のあまり、やっと食べられる夕食で腹一杯になるまで……」。この繰り返しが、カロリー過多の原因になる。小腹が空いてきた夕方に、間食を取り入れることで、上手に空腹がコントロールできる。

 「最適なのが、ナッツ類やフルーツ類などです。アーモンドやクルミには、食事で不足しがちなビタミンやミネラルが豊富なうえに、体にいい良質な脂質がとれます。どちらも『素焼きした無塩ナッツ』がお薦めです。フルーツ類ならば、バナナかパイナップルを薦めています。糖が体の疲れやイライラを癒してくれるうえに、ビタミン、ミネラル、さらに食物繊維もとれます」(榎田さん)

 なるほど、ナッツ類、フルーツ類ならば、コンビニでも手軽に買いやすい。スナック菓子などと比べて、よく咀嚼するから、少量でも満足感が得られやすい。体にいい栄養もとれる。

■不足しがちなたんぱく質は酒のつまみで補給?

 一方、甘いものが苦手な人や、もっと食べ応えがほしい人には、次のような間食もお勧めだと榎田さんは言う。

 「お酒のつまみのようですが、魚肉ソーセージやうずらのゆで卵などがお勧めです。忙しくて外食が多い人はどうしても立ち食いソバやラーメンといった麺類、カレーやカツ丼などの丼ものといった、炭水化物が中心の食事に偏りがち。そこで、間食ついでにたんぱく質をしっかり補いましょう。季節的には少し敬遠されがちですが、コンビニおでんにも、たまごや豆腐などがあります。また、良質なたんぱく質が含まれている豆乳などの大豆食品、牛乳やヨーグル、チーズといった乳製品でも小腹が満たせるはずです」(榎田さん)

 このように、夕方の間食で空腹を抑えておくと、その後の夕食で「腹七分目」に抑えやすくなる利点もある。

 「最も注意したいのは、それまでの習慣に沿って、間食をとった後の夕食も、これまでと同じ量にしてしまうこと。特に、間食で炭水化物をとったら、帰宅後の夕食では白米を抜く。その代わりに野菜と肉、魚類といった『主菜』『副菜』で済ませる。毎晩、お酒が欠かせない人にも向いています。こうした『間食』と『夕食少な目』のリズムが上手くできてきたら、できれば朝食をしっかり取る習慣にシフトしていけるといい。それだけでダイエット効果が高められます」(榎田さん)。

 早速、「間食」プラスのダイエット法で、その効果を実感してみよう。

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